2018年04月07日

「山梨シンデレラプロジェクト」(ミュージカル シンデレラ)を振り返って

『山梨シンデレラ!Chu―、Chu―』。
 山梨シンデレラ恒例の日課だ。稽古の始まりと終わりにこの掛け声が稽古場に響き渡る。

 稽古の始まりでは、今日1日の抱負を、稽古が終わるときは、1日の反省や翌日への抱負を述べコールを行う。その日、精力的に稽古を行った者、成果が上がった者などが選ばれる。選ばれるメンバーは、キャストだけではない。ピアノ伴奏、小道具係、裏方スタッフも加わる。最初の頃は、遠慮がちにコールしていたメンバーたちも回が進むにつれ、稽古の最初と最後に自然に稽古場の中央に寄ってきて行うようになった。

 舞台の表側も裏側も分け隔てなく進んでいったのはこのプロジェクトの魅力だ。

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 先日、3月11日の公演でプロジェクトは一旦終結した。約2年、いや台本制作・助成金の申請までを含めると2年半を超える長いプロジェクトであった。
 「山梨の人材で、山梨に残る舞台作品をつくる」のコンセプトのもと、山梨にゆかりある声楽家、演劇俳優、ダンサーなど団体も分け隔てなく舞台人が集まり、このプロジェクトはスタートした。

 俳優やオーケストラを地元で集めて行う公演は、全国各地で行われている手法であるが、衣装や小道具、進行など裏方までを地元の人材で、それも有料の公演として行っていくことは珍しい。未知の世界、手をつけなければならない部分もありすぎて、期待の半面、不安も大きかった。

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 ミュージカルは、演技、歌、ダンスと様々な技術が求められる。メンバーたちは、それぞれの壁にぶつかり苦労する姿もあったが、多様なジャンルのメンバーが集まったことが幸いし、稽古場の隅で得意な部分を不得意なメンバーに教えあう姿もよく見うけられた。

 プロとして頭角を示してきた者も少しいたが、ほとんどが学生やアマチュアで、みんなで必死に知恵を絞り、時間を費やし、たくさんの方からのアドバイスもありここまで来た。補い合いながら一緒に技術を磨いてきた。

 年齢、職業、舞台の経験や活動内容、いろいろと異なるメンバーが、新作舞台にチャレンジしたのだから様々なことが起きた。泣いたり、笑ったり、怒ったり、励ましあったり、討論を重ねる日々が続いた時もあった。

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 プロジェクトがスタートした2017年度当初、プロジェクトの一体感と創作の共通認識を高めようと俳優、オーケストラ、裏方スタッフ全員で演技のワークショップを行った。
 演技に馴染みがないオーケストラメンバーや裏方スタッフは、最初は戸惑っていたが、俳優たちと一緒にグループに分かれてワークショップを進めていくと少しずつ馴染んでいき役割を超えた一体感が出てきた。

 音楽稽古が始まると声楽家たちはいきいきと稽古をこなす一方、演劇畑の俳優たちは楽譜読みから勉強、かなり混乱した。一方で台本を片手に行う演技稽古では、演劇俳優はそれぞれの個性を出した演技を見せていくが、声楽家やダンサーはその迫力になかなかついていけない。初めはそんな感じだった。

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 様々な解釈があると思うが、「ミュージカルの歌唱は、役の心情が音楽にのって出てきたもので演技だ」とも言われる。言うは簡単、しかしその表現はとても難しい。

 ある日の稽古で一人の演劇出身メンバーが、「なぜこのタイミングで前を見て歌わなければならない?僕は、シンデレラに向けて語りかけたいのに。」と疑問を呈するときがあった。作曲家が作曲の意図、流れを説明し、それからはミュージカルが彼の中にストンと落ち、その後の演技、歌が格段にうまくなっていった。それにつられるように彼の演技の面白みが増していった。​

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 公演まで2ヶ月となった頃、ショッピングモールでのPRイベントや高校の体育館でのミニ公演などを経験し、メンバーの信頼関係、演技もどんどん上がっていった。また、場所を選ばす上演できる作品として様々なケースに対応できる作品づくりも同時に進んでいった。

 公演1か月を切るとグループ内の自主稽古、話し合いが頻繁に行われ、2017年2月、2日間の初演を満席のお客様の前で披露し、まずは1年目の成功を無事収めることができた。
 多くの方からお褒めの言葉を頂いた一方、課題が見えた公演であった。

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 2018年度は、進路、結婚、仕事の都合などを控えるメンバーもいて一部のメンバーが参加できない状況になり、新たにメンバーを公募した。小学生から50代までメンバーの幅が広がった。さらに初演の課題から指導スタッフを充実させ、より大きなプロジェクトに変貌した。

 春から夏にかけては、歌やダンス、芝居のワークショップを行い、ミュージカルの基礎技術を学んでいった。歌のワークショップでは、発声法や筋力トレーニングも行った。強靭な身体から発せられる歌声、歌が専門ではないメンバーも次第にマッチしてきた。

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 ダンスのワークショップでは、バレエを取り入れた。立ち居振る舞いからはじめ、手先、足先、動き方、はじめての経験であった。頭でわかっても身体が思うように動かず繰り返し稽古を積んでいった。お客様にわかりやすい作品になるよう台詞も改定した。

 音楽稽古では、音程やテンポ、ハーモニーを身体にすり込ませ、立ち稽古に入ると歌にニュアンスを加え、役のキャラクターを分析し、演技をブラッシュアップさせていった。

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 初演に不足した部分を磨き、11月・北杜市須玉ふれあい館で、ほぼフルパッケージでのアウトリーチ公演を成功させることができた。
 初演と異なる配役で、コラニー文化ホールではない劇場で公演を成功できたことは、プロジェクトのコンセプト「山梨に残る作品」に一歩近づくことができた公演であった。

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 北杜市公演を終え、いよいよプロジェクトの最終段階に入った。製作体制をこれまで以上に山梨の人材を中心とした形に変え、山梨の人材による本格ミュージカルの製作を具体的に進めていった。

 配役が変わり、一部の役ではダブルキャストを採用し、指揮者、オーケストラメンバーも変わった中、稽古のスケジュール管理、制作業務、日々の稽古もメンバーが進めていった。

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 体制を変えた当初は、戸惑いや混乱もあったが、一方で全メンバーに自主性が出てきて、互いに話し合い、経験者が新メンバーにアドバイスする姿など徐々に新しいプロジェクトの形が見えてきた。

 2月下旬になるとすっかり定着し、稽古がスムーズに進むにつれ、作品の完成度がどんどん上がっていった。3月、2日間の公演を見ればその成果を感じていただけることと思う。
 これまでの数々の教えをベースに見事、メンバーたちは公演を成功させた。

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​​ この2ケ年半で約100名の舞台人が、共に学び、助け合い、考え、一つの作品を創り上げてきた。

 4年前、山梨大学の学生たちが自主的に制作した作品にたくさんの人の手が加わり、次第に形を変え、『ミュージカル シンデレラ〜ねずみたちのプリンセス〜』は、山梨の財産のひとつになったのではないかと感じる。
 かく言う私ども指定管理者もこのプロジェクトでたくさん学び、成長させてもらった。

 このプロジェクトは、ここで終結ではない。ここから第二幕が開かれる。
 この作品を演奏したい人から連絡をもらえれば全面的に協力するつもりでいる。
 もちろん私どもも近い未来、また上演したいと思っている。
 山梨に残る作品になるために。

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◇山梨シンデレラプロジェクト参加者◇

西木愛、金井優子、京島麗香、原田直美、クボタリナ、渡邉茉梨恵、大澤歩土、古屋倫之、樋貝考弘、清水亜耶、羽矢渚彩、山本将広、中尾宏行、渡辺智美、安田祥子、穴水真悠、山岸笑子、吉岡真紀、天野壽理亜、広瀬響乃、中村江利奈、徳丸貴子、荻野真世、奥秋大樹、土橋創、笠井麻里子、飯久保準一、根岸香苗、山野靖博、伊佐治杏子、川瀧英梨子、芝野拓也、保坂秀世、本多世里香、勝野 菜々実、山田紗瑛、荻野理沙、近藤未夢、安田陽菜、安本七海、高橋夏海、井澤絢香、清水瑠奈
森脇涼、辻博之、秋山史、山口真由夏、宮川忠生、山本佳輝、田中愛子、小室明佳里、依田秀樹、久保田佑里、日原早樹、渡辺玲子、切石史子、笹平幸那、阿部薫、渡邊眞理愛、三森美玲、津秋歩美、曲淵俊介、塩島優季
伊藤駿、三輪えり花、Lutherヒロシ市村、深沢由美、渡辺亜紀子、依田歩、椛蜥シ、吉川マッハスペシャル、渡辺とんそく、辻はるか、小林博、植原美紀、藤巻都、秋山明、長尾聖子、河田園子、伊藤優里、河本和也、齋藤由衣、鈴木彩加、渡辺梨央、片岡紗那、横森千佳、小林俊子、萩原志穂里、青柳工務店、小林淳、山田耕三、萱嶋 晴子
コラニー文化ホール指定管理者


2018年3月24日


コラニー文化ホール指定管理者
加藤信一
posted by ミルケ at 09:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記